次に,CTNが実際に具体的プロジェクトを推進する場合について考えてみたい。
CTNが,ある個的夢想というテーマについて,中核となってプロジェクト推進を
するとき,そのCTNが形成しているオープンウエッブ上において,そのプロジェ
クト遂行に適した実行部隊としての具体的メンバーを抽出することになる。
下図のように太線の枠でかこった部分がそれである。下図の事例では,中核とな
るCTNと,学究分野のバックグラウンド全体と,ある他企業のCTNおよびそれが活
用できる他企業インフラと,社内の特定部門あるいは特定システム,そして顧客
代表とによって概念デザイン開発プロジェクトが結成される。
ここで重要なのは,概念デザイン開発の実際場面では,情報源流としての顧客
ニーズを直接的にかつ当初より永続的にとりいれるしくみを,プロジェクト内に
存在させることである。図のような太線でかこんだ社内外をふくめた期間限定組
織化を,Creative Talent Formation=CTフォーメーションorCTFという。
創造型企業ではこのCTフォーメーションがたえず出現することになるだろう。
実際の企業経営
においては,すぐれたCTNの育成と同時に,高度なCTフォーメーションの実践が
重要となる。CTフォーメーションを成功させる鍵は,メンバーの厳選と概念デザ
イン展開インフラの確保である。前者ではとくに,超領域的な学問分野を実際に
手がけている研究者や,近代パラダイムを超克する超先端技術分野のエンジニア
などの確保が重要である。後者ではとくに,技術翻訳された文化領有域の開発と
展開にかんし,廉価で高品質な産出が可能な最先端インフラの確保である。
最先端インフラとは必ずしも高度機械技術によるものを意味してはいない。
たとえばそれは地方の町工場の手作業かもしれない。また,いままで死闘をくり
広げてきた商売がたきが持っている生産ラインやユニット。CTNや概念デザイナー
の使命は,個的夢想の実現のためにもっともすぐれたCTフォーメーションを展開
することなのだ。そして,多律背反するものを数多くひきうけて,調整していく
ことなのである。
CTフォーメーションにおいては,社内のインフラは遂行プロジェクトのためのひ
とつの選択枝でしかない。CTフォーメーション上,社内インフラよりも優秀な
インフラが外部にあればそれを駆使すべきなのである。社内のインフラは企業の
ために活用していかなければならないことは事実だが,CTNの役割としては,
社内インフラをまず,CTフォーメーション化されうる状況に牽引することであろう。
前項でものべたように,現況の大企業の形態や,大企業から産出される大量画一
製品は,ネオパラダイムにおいては大きく変容すると考えられる。しかし,大量
画一生産が消滅するということではない。最終形態を現出させる商品展開はより
個的に多種多様になるといえるが,商品を構成する”素材”は高品質で廉価なも
のが共通でつかわれる可能性が高い。現在でも,電子部品や樹脂材料などで世界
の市場の70%以上をおさえるという,中小規模のいわゆる”オンリーワン”企業
が存在するように,将来的にも,まったくことなるようにみえる商品でもその中
身は高度な共通素材がつかわれているということは十分にありうる。
最終展開される商品は非画一的になるであろうが,その素材(広義の)は”世界
でもっともすぐれた同じもの”ということになるといえる。自然界に顕現してい
る物質をつきつめれば,原子核と電子のくみあわせによってできている。そして,
実際私たちの目に映るのは,千変万化する物質界である。これのアナロジーが21
世紀的な創造社会では現出することだろう。
いわゆる現況の大企業は,その持てる設備や陣容を活かして,すぐれた”素材”
を提供するようになると考えられる。CTNは大企業から提供されるすぐれた”素材”
をフル活用しながら概念デザイン開発を推進することになるだろう。”素材”を
提供するという意味において,また,CTフォーメーションのなかでの”素材”とし
てつかわれるという意味において,現況の大企業は”素材化”していくことになる。
「大企業」→「下請けとしての中企業」→「孫請けとしての小企業」という構図は,
21世紀においては,「コンダクターとしてのCTNあるいは小企業」→「オープンウエ
ッブ上の調整役としての中企業」→「CTフォーメーションの中で”素材化”する大
企業」という構図に逆転していくのである。