2000年-3月25日…21世紀のモビリティ・ビジネス…文責;Taikoh Yamaguchi@gainendesign.com
フォード傘下のマツダ社長に36歳のアメリカ人経営者が就任し、この4月からは日産のゴーンCOOが社長に、そして同時にゴーン氏直系ともいうべき
CFT=クロス・ファンクション・チームから40代半ばの若手が執行役員に抜擢され、はたまた、やっぱりダイムラ・クライスラに三菱自動車が”抱かれ”、
ルノーが韓国の三星を買収する…自動車産業を巡る表層的な動きが非常に活発的になってきております。既に昨年の5月22日付け慧「21世紀の自動車産業の
グローバル・シェア」で述べたように、昨今の自動車を巡る激しい動きは、21世紀におけるモビリティ・スーパーアライアンスという基本構造が顕現してきているわけです。
したがって、こうした大きな表徴的な流れは、”当然の帰結であって”、その本質を押さえておけば、今後の行方も見えてくると思います。
さて、1999-5-22の慧では、いまだ明確な最終ゴールが見えた段階ではありませんでしたので、一般論的に類推しましたが、この1年でぼんやりながら21世紀のモビリティ産業の
風体が見え始めましたので、その特徴を中心に考察しておきたいと思います。
まず、既に実体として、大型合併や提携が日常茶飯のこととなっていますので、個々の提携話はその筋の専門家にお任せするとして…今回の提携劇において私がもっとも
”それらしいナ”と感じたのが、実は「トヨタ、GM、ワーゲン」の大連合の”噂”でした。
5月22日の慧で述べた、グローバルトータル台数の4000万台という数字はあくまでも、現時点での生産台数であり、21世紀のものではありません。20世紀的な自動車単体を
生産し販売するという20世紀型の大規模単独企業における自動車会社という構図は明らかに斜陽でありますが、トータルモビリティサービスという意味では、モビリティの
分野は大幅に拡大こそすれ、決して斜陽ではありません。ちなみに20世紀的な自動車会社に固執するところは、否応なく21世紀のモビリティワールドから捨象されるでしょう。
さて、それでは21世紀のモビリティサービス総体はどのようになるのでしょうか。
まず第一番目に考えなければならないことは、人類が数千年を経て獲得した”身体拡張機能”である、「地上の高速移動」という新しい概念、あるいは生命体は決して死滅しないということです。
そういう意味では20世紀が発生させた「自立型機械生命体」が自動車であるのだと、概念設定することが重要です。そしてこの新しい生命体は、生命体の特徴である”進化”と”増殖”
と”集団における自己組織化”を兼ね備えていると考えられるわけで、地球上におけるその総個体数が既に1億を超えているという、すざまじい生命体であります。
その自動車=モビリティ空間が、21世紀序盤の技術的、社会的なハードルを乗り越えて、生存空間をさらに拡張しようとしています。具体的に言えば、中国を中心としたアジア地域への
増殖、その他発展途上国における増殖は必然であり、結果物理的な市場の拡大は少なく見積もっても現在の3倍程度は膨らむと言えましょう。そうすると、21世紀序盤から中盤
にかけてのモビリティグローバルシェアは現在の4000万×3=12000万、少し割り引いても21世紀は約1億台・年の自動車が生み出されるということになります。
これにスーパーアライアンストップグループの安定シェア予想値34%を乗じると、トップグループは約4000万台・年を生産する集団となります。21世紀にいきなり新興企業が出現して
単独で4000万台を創出することは殆ど考えられませんので、既存の集団の中からこのトップグループを形成すると考えると、GM、トヨタクラスの超トップ企業群が最低限2〜3強力な提携を
組みながら、全体として4000万台を押さえるという図式にならざるを得ません。(因みに昨今喧伝された400万台クラブの根拠などどこにもありません。)すなわち、GMグループ、
フォードグループ、トヨタグループ、ダイムラ・クライスラグループといった、”中途半端なアライアンス”は決してゴールが見えていないということです。
そこに出てきた噂が、トヨタ、GM、ワーゲン等の大連携の話で、ここにきてようやく、トータル4000万台の図式がほんのすこし垣間見えました。もちろん当事者は現在否定しているようですが、
むしろ、「あっと驚く大連携」が出現して初めて21世紀のモビリティの棲み分けが開始されるわけです。
生命体としてのモビリティが21世紀にどのように増殖し、どのように棲み分けるのか、第一番目に着目すべき点であります。
第二番目に重要なポイントは、20世紀に精緻華麗に咲き誇った大企業群はすべからく21世紀的な洗礼を受けるわけですが、自動車産業も同様の大変に厳しい洗礼を受けるという
認識です。洗礼とは、@グローバル規模の大技術革新、Aますます厳しくなるコスト競争(生存競争)、B主導権が生産側=企業側から名実ともに顧客側に渡る…ということで、
特に、大技術革新とは、グローバル環境対応、IT対応であって、これゆえに、いくら大企業であっても単独ではもはや技術開発ができない(能力的に、投資的に)という状況が生じ、
結果グローバル・スーパーアライアンスに”ならざるを得ない”という、20世紀的な企業にとっては甚だ厳しい生存条件がつきつけられているわけです。
グローバル・スーパーアライアンスによって、技術は高度化し、それなりに消費者にとっては良い製品の基盤は揃うことでしょう。しかし、その本質は究極の同一プラットフォーム
であって、商品の差は、「表現の差」ということになります。「スーパーアライアンス」という必要条件と「優れた表現技術」という十分条件を備えたところのみが
最低限の生存可能性を許される…企業にサイドにとっては誠にシビヤな、そんな時代が来る、必ず来るという認識が大切です。
第三番目に押さえるべきは、すこし様相が異なりますが、少なくとも日本の自動車関係者は次の認識を持つことが肝要です。
すなわち、1990年代の”第三次世界大戦”とでも言いうる、経済大戦において、既に欧米に敗戦し、現在はその戦後処理の一環として、あたかも太平洋戦争後のGHQの活動のように
「外資が日本企業と日本市場とを席捲していると」…。そしてその構造を抱えたまま21世紀に突入していくのであると…。
自動車という基幹産業もこの流れから逃れることはできません。そして最も重要で、辛らつな認識としては、モビリティ産業の再配分はほぼ終了に近づいているということ、
その配分が、かくも”巧みに”「米英」「フランス」「ドイツ」を核に再配分されたという事実です。
この件に関してはあまり深く言及はできませんが、少なくとも日本人、日本企業は上記の三大配分の意味を深く噛み締める必要があります。
結論…めまぐるしく動く、自動車産業の動きの潜在構造を見据えるために…
@新増殖市場、アジアへの橋頭堡をどのように確保するのか
AIT革命へのシフトをどのようにするのか
B環境技術の粋をいかに手中に納めるか
C優れたプラットフォームをいかに利用可能にするのか
D手を握る最高の相手は本当は誰なのか
この5つを見ておけば、どの既存の企業、あるいはバックとなっている国や政治家が本質的な戦略を抱いているのか、最終的にどの企業がリーダシップをとるのか…
それが見えてくると思います。…21世紀のトータル・モビリティ・サービス産業は…やはりオモシロくって、夢がありますね。但し、本質を押さえないと…。