”慧”小論文


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2000年-4月1日…ヘッジファンド封印さる…文責;Taikoh Yamaguchi@gainendesign.com

3月31日付けで、新聞各紙がタイガーファンドの清算を報じました。北海道の有珠山の噴火報道で一色の国内では、この話は素通りしてしまうに違いありません。 タイガーファンドはジュリアン・ロバートソンが率いるヘッジファンドの老舗で、既にいくどか言及しているジョージ・ソロスのクワンタムファンドと並び称される ヘッジファンドの代表格です。この辺のいきさつについては1998年10月15日の慧;急告!デリバティブとヘッジファンドを封印せよ!を 参照ください。1年半前、私はヘッジファンドの危険性に矢も盾もたまらずに、「封印せよ!」との表現を使いながらヘッジファンドの戦略の危うさに警告を発しました。
そしてその後、日米両国共に、ヘッジファンド規制の強化に努めはじめているようです。そのヘッジファンドのタイガーが清算、すなわち実質倒産し、見事に封印されたわけです。 金融システムの中でも特にヘッジファンドは、その「匿名性」「得体のつかみにくさ」「超巨額なレバレッジ投資」「高度なコンピューター技術を駆使した超高速取引」において いまだかつてない、極めてリスキーな存在なのです。その本質はギャンブル性であり、実態的な富の増殖を伴わない、明白なゼロサムゲームで、しかも、既に富を十二分に 収奪している人間やグループに圧倒的に有利に働く、富の再収奪装置といえます。すなわち、売上高1兆円、営業利益が1000億円規模の大企業が、お遊び感覚で、1億円くらいを ギャンブルとしてヘッジファンドで運用させてみるといった程度の代物で、決してヘッジファンドによって、経常利益を常態的に捻出しようなどと、ゆめゆめ思ってはならない 対象です。それゆえに、ヘッジファンドとは私が「金融大魔帝国」と揶揄する金融経済主流派の第一線の武器であるといえるわけです。
そのヘッジファンドの一角が、主に取引先からの資金引き上げによって、自然消滅的に清算されたことは、まさに封印されたと称するに値する出来事なのです。

前述のようにアメリカにおいても昨今ヘッジファンドに対する規制強化が進行していますが、実際のところアメリカの財政当局者は「銀行の融資規制を通じた間接的規制に加えて、 金融先物市場の監視などによる直接的規制を検討している」旨を明らかにしていますが、但し、ヘッジファンド本体の直接規制や直接指導はしない…というところが抜け穴 になっています。しかし、今回のタイガーファンドの自然消滅のように、政治的な規制による封印よりも、賢明なる人類の判断が自壊的にヘッジファンドを封印する 方がはるかに好ましいことでしょう。ギャンブルはあくまでもギャンブルとして、実体的な富の増殖という「額に汗する行為」の裏側で、ひそやかに生存すべきなのです。
ギャンブルがわれを見失って、実体経済の表舞台において主役たらんとした結果、必然的に封印されてしまった…こういう図式で今回のタイガーファンドの結末を押さえる べきかと思います。

さて前財務省のルービン長官を議長にFRBや商品先物取引委員会などが「金融市場に関するワーキング・グループ」を発足し、ヘッジファンドの規制について議論してきた わけですが、ルービン氏に関するお話をもうひとつ…。

前財務長官ルービン氏はホワイトハウスを去った後、シティーグループに納まりました。そしてこれまで頑なに否定していた同グループの会長職にこの3月末に就任しました。 ジョン・リード現会長と同様に会長職を行うルービン氏は一体どういう戦略を抱いているのかを推測してみましょう。

ジョン・リード現会長は1980年代にガタガタになってしまったシティーグループを建て直し、その後買収政策などによりシティーグループを世界有数な優良銀行に再生させた 立役者で、彼の経営手腕は非常に高く評価されています。そのジョン・リード氏が打ち出した最大の再生戦略が「顧客対応」というコンセプトなのです。つまり今まで 大企業や大規模組織に向けてきた目を、顧客個人独り独りに向けていくという大転換コンセプトです。この戦略は、21世紀的な潮流である「個人」というテーマに則って 非常に奏効し、数年のうちにシティーを蘇らせることに成功しました。

私が最も感心をしたのは、「顧客第一主義」を標榜するシティーがいち早く日本の巨大集金システムである、”郵便局”と提携したことでした。
1998年に個人的に訪れた日本最西端の島与那国島の郵便局にATMがおいてあるの見たときには、手放しで感動をしたことを思い出します。私は少なくとも国内を 旅行するときには郵貯に適当な額を改めて入れておき、郵貯の緑のカード一枚を持って出かけます。旅行する者にとって、旅先で都市銀行や地方銀行のカードくらい 役に立たないものはありません。そういう意味では郵貯カードは魔法のカードなのです。最近では殆どの郵便局にATMが設置されていますので、コンビに感覚で 山奥の郵便局に立ち寄れます。…その郵貯と手を組んだシティーの戦略と実行力の凄さには舌を巻きました。すなわち、シティーのキャッシュカードで全国の郵便局の ATMが使用可能なのです。こうしたことに手を出した邦銀は皆無です。こう言う面はやはり見習わなければなりません。

さて、シティーはいち早くネットバンキングにも手がけ、しかも邦銀がやっていない、インターネット上のみでの口座申し込みを可能としていました。私は シティーのこの「顧客対応」コンセプトの小気味よさと対応の早さに早速ネットバンキングの口座開設を申し込みました。

さてさて、ここからが本日の本題です。シティーのネットバンキングの正式開設は”口座への振込み”がスタートになり、最低10万円の預金が必要とされます。 私は、ためしに郵便局のATMからシティーへの口座へ振込みを行いました。結果は言うまでもなくすんなりとシティーの口座に私の10万円が振り込まれ、めでたく 私はシティーの個人口座を開設することができたのです。

ところが2ヶ月も経ったころ、突然シティーから自動引き落とし通知なるものが配送され、私の口座から約2000円の「口座管理料」なる現金が差し引かれていました。 突然の通知に半ばあきれ、半ば憤った私は即刻抗議の電話を入れようと思いましたが、もう一度くまなく契約書と説明書きを調べなおしてみました。 すると、どうでしょう確かにそこに小さな字ながら、「月額平均30万円以下の場合には口座管理料2000円を引き落とす」と記述されています。

この重要条項は契約書には記載されておりません。その代わりパンフレットに近い説明書にわずか数行で記述されておりました。記載されている以上「口座管理おける 自己責任の建て前」、シティー側には偽りもミスもありません。単なる私の読み落としなのであります。一応確認のため先方払いの専用電話をかけてみると、自動応答式の 音声に導かれて…結局は生の人間には行き着かず、ばかばかしくなって電話を切りました。

私が海外にでも長期滞在していたら、10万円の預金は立ったの4年間で全て消滅するところでした。なぜかって?口座管理料は月額2000円だからです。
10万円振り込まなければネットバンキングがスタートできない、30万円月額平均で残存していなければ口座管理料を自動的に引き落とす…確かに外資系らしい効率的な 営業方法であります。瑣末な口座を長年みだりに管理するよりは自動消滅を図るほうがはるかに経営センスは優れています。30万円という絶妙なラインで顧客の資金を 最低限度銀行側に確保しておくことはこれまた人件費とのバランスで極めて合理的な戦術です。
ただし、極めて日本人的な私は即刻支店に出向き、2ヶ月で4000円以上も減ってしまったネットバンキング口座を解約したのでした。
シティーが基本コンセプトにしている「個人顧客に向いた経営」というのは、言いかえると「顧客の利便のために顧客に向いた」のではなく、「顧客の資金に向いた」 ということが垣間見られます。その観点でシティーが早々と提携した郵便局を考えると、やはりその本質は郵貯に眠る数十兆円規模の個人資金と看破できましょう。

郵便局の基本コンセプトである「田舎のおばちゃん、おじちゃんのための利便」と一見近いようで、その実大きなコンセプチュアルギャップが大いにありそうです。
「個人顧客へのサービス向上」を基本戦略に据えた外資系バンクという花嫁が、郵貯という大店のぼんぼんに嫁いできた…そんな感じのするシティーと郵貯との 提携なのでした。そのヘッドに前財務長官のルービン氏がなる…う〜む。いろいろと思いは巡ってしまいます。

やはり外資系の狙いは直接、日本人の個人資産総額1200兆円に向かっていると考えるべきでしょう。ギャンブル的なデリバティブとその元締めたるヘッジファンドという 集金構造にかげりが生じてきた今日、もっと別の集金構造が仕掛けられることは必至でしょう。
最も簡単な方法ですか?それは…「円以外の通貨による高利率な預金口座」「為替差損の演出」+「大量な外債購入とそのデフォルト」ということでしょうか。
日本の個人顧客は外資系の言う「個人責任」の名において、”賢明なる資産維持と増殖を図らねばなりません”。同時に既存の邦銀およびバンキングに進出しようとしている 企業系新興バンク(トヨタ、ソニー、ヨーカ堂、ソフトバンク等々)は日本の個人資産の海外流出とその消滅に対して徹底的な防御策を図っていただきたいと 思うわけです。

  


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