2000年-11月17日…米大統領選挙外伝…文責;Isoroku Noguchi
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アメリカ在住の友人、野口五十六さんが伝える、混迷のアメリカ大統領選挙の舞台裏。
11月9日〜14日にかけてのフロリダからの生情報です。
11月20週の生情報を追記
11月27週の生情報を追記
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■ ”花”の差
投票日直前、テキサスの地元紙が“最後の言葉”
というジョークを発表した。それによるとゴア氏「ハートがあればなあ」、
ブッシュ氏「脳みそがあればなあ」。
さて、ハートが勝つことになるのか、脳みそが
勝つことになるのか。女神のほほえみの行方は
だれにもわからない。
こんどの選挙にはほかに「政策のゴア」に「人柄の
ブッシュ」という見方もある。
さて小欄の私見をあえて大胆に書けば、できること
なら“ハート氏”に勝ってほしい。ブッシュ氏である。
たとえば対中国外交をとってみても、民主党でなく共和
党の方がきちんとしている。日本の国益に沿っているよ
うに見えるからだ。
そこで私のジョーク「花の差で、写真判定」。
ブッシュの方がわずかに花がある。
大リーグを見ていただきたい、審判の裁定はけっしてくつが
えさない。それが民主の原則かと思う。
■ 327
327、この数字はフロリダ州の再集計後のブッシュが
かろうじてリードを保った数字。後は推計2000余の
海外からの不在者投票の開票待ち。海外からの不在者投
票は軍関係者が多く、ブッシュが優勢とのことなので、
たぶん女神はブッシュに微笑むかと思う。そして週末を
境に、ゴア陣営がどこまでゴネるかの妥協点の模索に移
るかと思う。いずれか一人がアメリカの大統領、1人が
アメリカの歴史上のヒーローになる。
民主主義は多数決の原理というもので、半々の絶妙なバ
ランスでも行けないらしい、やっかいなものだ。
もし、ここでゴアの引き際がきれいであれば、4年後の
大統領のチケットを手にすることができるだろう。4年
などすぐだ、東洋の知恵に「切り結ぶ 刀の下こそ地獄
なれ 身を捨ててこそ 浮かぶ瀬もある」とある。
法で争っても、時間だけが悪戯に過ぎ、得るものがない。
国民と国家のためを、己よりも優先に処してもらいたい。
■ パーンビーチ物語 (1)
今、フロリダ州から目が離せない。とくにパームビーチの
投票用紙不備が大きな問題となっている。
アメリカでは老後を暖かいフロリダ州で過ごす人が多く、
街並みは老人、養老院、薬屋、病院、葬儀屋ばかりが目立
ち、さながら天国への待合室のような州である。
パームビーチの人口構成は、90%がユダヤ系、10%が
イタリア系の高級リゾート地。そこにアメリカ東部のユダ
ヤ系が移り住み、ゲートに囲まれたガードマンつきの高級
マンションで老後を暮らしている。ユダヤ系は一般に民主
党の支持者が多く、しかも今回は民主党の副大統領候補が
初めてユダヤ系。彼等は保守系右派のブキャナンとは最も
遠い距離にある。それがよりによって投票紙不備のために
間違ってブキャナンに投票。ないしは間違った無効票が、
19,000票として、再選挙すべきと騒ぎ立てている。
これは恐らくその通りで投票間違えだろうし、ゴアの勝敗
を分けた一因だろうと思う。パーンビーチのユダヤ系にと
り、一番嫌いなブキャナンに間違って投票してしまい、そ
のためにゴアが負けたとすれば、やりきれない気持だろう。
実にユダヤ的な皮肉なギャグでしかない。ユダヤ人は時折、
宿命のようにこうした悲哀の結末になってしまう。
が、では、再選挙すべきか。それも間違いである。
■ パーンビーチ物語 (2)
ではなぜ、パーンビーチでの再選挙するのは間違いなのか。
民主主義とは、それぞれ考え方の違う人々が、多数決で法と
いうルールを定めて、共存して生きて行くための道具である。
ルールを決めるまでは、立法の賛否の討論や批判もいいが、
いったん決まればそのルールが改定されるまでは、ルールに
従って行くことを原則としている。
神の法から離れ、人間が定めた法だから、ベストではないか
も知れないが、それ「デモクラシーいい」と、多数決で常に
ベターを選択して行く制度である。
だから一度ルールを決め選挙した後で、あれは間違いだった
という理論は通らない。たとえ間違っていたとしてもである。
もしそうなら投票の前にルールの改正を言うべきなのである。
大リーグのワールドシリーズで、9回裏ツーアウト1打優勝
のチャンスに、ボールをふって三振したからもう一度打たせ
ろと言っても審判も観客も許さない。何故ならそれがルール
だからである。たとえ大リーグの審判に判定のミスがあった
としても、審判の威厳と権威にかけて改めたりはしない。
■ パーンビーチ物語 (3)
実は偶然にも14日にこのパーンビーチに行くことになっている。
半年前に決めたことで、友人の誕生祝に夕食を共にすることにな
っている。14日はパームビーチの最終票決の日で何たる奇遇。
その後、展示会で19日までマイアミに滞在予定、17日がフロ
リダ州の最終決着の日。歴史の台風圏内で呼吸することなり、今
からそれを楽しみにしている。
友人もユダヤ系で、私の英語の個人教授(私の英語がだめなのは、
全て彼の責任による)。彼とは本音で話せるので情報交換の予定。
もしこのままパーンビーチのユダヤ系が法的に騒ぎ、今回の問題
を大きくするようだと、アメリカ人の間に反ユダヤ人の感情が芽
生える危惧を覚えるからである。仮にゴアがこのことで勝利でも
すれば、間違いなく嫌ユダヤ系となる。最悪のケースとして海外
からの不在者投票で、イスラエルに住むの二重国籍アメリカ人の
票で(民主党は1000票とサバ読みしているが)、ブッシュが
負けたとしたら、ユダヤ、しかもイスラエルで大統領が決まった
となれば、アメリカ人は黙っていまい。またこのままブッシュが
勝ったとしても、お前らのミスで負けたと反感をかう。どちらに
しても割があわない。
一般のアメリカ人にしてみれば、イスラエル問題でこれほどサポ
ートしているのに、アメリカの大統領選挙法にまでゴネてケチを
つけ問題を大きくる気かとなる。そうでなくても、ユダヤ人問題
で悩んだドイツやヨーロッパ諸国が、若きアメリカのユダヤ対策
のお手なみ拝見とばかりに興味深く静観してる。多民族国家で複
雑に構成されているアメリカが、彼等だけの我がままを、そう何
時までも見過ごすわけがない。妥協、ゆずるということを知らな
い彼等だが、ここはおとなしく矛を収めるべきなのである。
■ パーンビーチ物語 (4)
童話「星の王子さま」の中で「心で見なければ、物事はよく見え
ない、肝腎なことは目に見えない」と、言っている。大統領選挙
後のドタバタ劇の中で、誰も、そう誰一人として(たぶん私しか)
ユダヤ人の事について言及していない。メデア関係にユダヤ系が
多いからかも知れない。「それとこれとは全然関係ない」と、そ
知らぬ顔。それにアメリカでは種族に関する発言は最大のタブー
中のタブーだからである。しかし、そうした発言がない事は、そ
うした事が無いということにはならない。民族の摩擦に我々より
数倍も敏感な彼等に、そうした事は無いと言う方が不自然である。
いや深層部にあるからこそ、肝腎なこtが目に見えないのかも知れ
ない。そんな事でよく見えない事を、心でもう少し見て行きたい。
ただ、一つの民族を語る時に注意せねばならないは、100%こ
うだと断定などできないことである。一民族の中にはさまざま人
がいて、とても断定なできるものでない。ここでは一つの民族的
傾向としてみて行く。
■ パーンビーチ物語 (5)
ユダヤ民族は地理的な国を失い、ユダヤ教をより所に2000年
もの間、流浪の民として他国で生き抜いてきた民族である。そん
なことから、彼等は国家やナショナルを越えたて、世界、インタ
ーナショナルを志向してきた。そのため居住するその国の国民に
なりきれず、ナショナルとユダヤ的インターナショナルの狭間で
「屋根の上のバイオリン弾き」さながら、危うく左右にゆれなが
らバランスをとってきた。そのために絶えずスターリンのロシア
共産主義によるトロッキーとユダヤ人グループの国際共産主義の
大粛正や、ナチスのドイツ民族主義によるユダヤ人迫害など、各
地で迫害の歴史をくりかえして、ついに彼等は「出ヨーロッパ」
し「乳と蜜の流れる」自由の地、アメリカに辿り着く。
迫害の教訓と恐怖から、彼等はいくつかの事を学んだ。大衆に影
響を与える映画やマスコミのメデアをおさえる事、教育界に進出、
弁護士と法の行使、政府へのロビーイング、できるだけ目立たぬ
ように、ナショナリズムの台頭を抑制、そして、国家志向のない弱
い政府、等々(国家観念のない日本などはユダヤ人の理想国家)。
かくして「声高い力のある少数」として、アメリカで2%強のユダ
ヤ系が、大きな影響力をもって生活している。そんなことで、彼等
の嗅覚から民主党の支持者が多い。
アメリカは自由の国だからそれはそれでよいと思う。しかし今回の
ような露骨に政治干渉をし、2%が98%の反感をかうこともない。
すべて自分が正しというのでなく、歴史から妥協と譲歩、ときには
馬鹿になることも学ぶべきかと思う。アメリカはまだまだ基本的に
キリスト教徒のワスプの国(白人、アングロサクソン、プロテスタ
ント)なので、同じ歴史をくりかえさぬよう。
■ パーンビーチ物語 (6)
話しをパーンビーチ物語に戻したい。
1960年の大統領選挙でも得票率がケネディー49.72%、
ニクソンが49.55%の差となり、一つの州の勝敗がぎりぎ
りまで確定せず、それが最終的な選挙結果まで左右すること
になった例がある。
その時ニクソンは、ケネデイー側にいくつかの投票疑惑が見
つかりながらも、国家の混乱することを避け、国民を優先さ
せて、泥沼の裁判闘争にならぬように素直に勝ちを譲った。
もしこの時、ニクソンが裁判闘争をやっていれば、ケネデー
陣営、特にマフィヤとも噂のあった、ビル・デイリー、シカゴ
市長の不正選挙とケネデーとマフィアの癒着が大きなスキャ
ンダルとなり、国は大混乱し、あるいはニクソンが大統領に
なっていたかも知れない。もしそうなら、ケネディーは暗殺
されずすんだろうし、ニクソンがマフィアに殺されていたか
も知れない。でも歴史に if などはない。それでも秘話は残る。
ニクソンは選挙戦の疲れを癒すため、パームビーチへ休養を
とりに飛び、仲間とレストランで食事をしていた時;
フーバー元FBI長官から「これから、ケネディーがそちらに飛ぶが、
極秘で会ってほしい」との電話が入ってきた。
■ パームビーチ物語 (7)
何かの負い目を感じてパームビーチに飛んできたケネディー
とニクソンが極秘で会い、そこで何を話したかは定かでない
が、その後ニクソンは法的手続をとりやめ、ケネディーは救
われ大統領に、シカゴ・マフィアとの関係疑惑も封印され、
デイリー市長のマフィア的な不正選挙運動も不問となった。
そして40年後、同じパーンビーチで大統領の選挙結果を左
右する大騒動である。歴史の怨念というか、磁場というもの
は誠に面白いものである。
しかも、しかも、当時のビル・デイリーシカゴ市長の息子が、
今回ゴア陣営の選挙対策本部長をつとめ、パーンビーチで裁
判闘争も辞せずと、徹底抗戦と恐い顔してマフィア的こわも
てですごんだ、あのビル・デイリー Jr 元商務長官というのだ
から面白い。
共和党の長老達に言わせれば「デイリーJr が何を言うか、死
んだ親父さんからよく話しを聞いて、顔でも洗って出直して
こい」と、「今度は譲れ」と言ったところであろう。
パーンビーチは今日も暖かい太陽が照りつけている。(完)
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■ 続 ・ パーンビーチ物語 (上)
今フロリダは全国から我も我もと押し寄せる弁護士で
ちょっとしたラッシュ。その大半の弁護士がユダヤ系
というのだからあきれる。双方の弁護士が訴訟合戦を
展開し、訴訟社会アメリカの硬直した行き詰まりを象
徴化している。
いったん訴訟となると、人間的な情理
は失せ、冷たい法文が羅列し延々と不毛な論争だけと
なる。パームビーチでの訴訟の矛先は、7000票あ
るという「えくぼ票」または「妊娠票」とも呼ばれる
機械では読み取れぬ、パンチで穴の空かななかった、
わずかなふくらみの投票紙を、どう判定するかに向っ
ている。ブッシュ側はこれを無効票とし、これで大逆
転をねらうゴア陣営は有効票として手作業による集計
を継続している。
果たして立ち会い人が「えくぼ票」
「妊娠票」にした人の心態まで読めるというのだろう
かは大きな疑問である。立ち会い人が投票紙を仰ぎ見
たり、下からライトを当てたりしている集計の映像に
大統領の威厳が損なわれているようで胸が詰まる。
また度重なる集計論議に、多くのアメリカ人はうんざ
りしているので、いっそのことこうに分けたら面白い。
もしゴアが勝ったら「妊娠票」で誕生。もしブッシュ
が勝ったなら天使の微笑み「えくぼ票」。
いずれにしても大統領権威が軽んじられたものである。
■ 続 ・ パーンビーチ物語 (中)
21日に州最高裁がゴア側が上訴した「パームビーチ
郡、ブロワード郡、デート郡の手作業の集計」を承認。
これでゴア逆転の可能性に「民主主義の勝利」と歓喜。
翌22日午後、マイアミ ・ デート郡が手作業集計の中
止を発表し、歓喜から暗転して落胆とめまぐるしい。
ゴアにとり逆転にはどうしてもデート郡65万票の手
作業による集計が不可欠なため、ボディーブロー的な
大打撃。あるいはこれで勝利が決まるかも知れない。
22日朝、最高裁のゴア有利な裁定に予想外の伏兵が
デート郡集計所の待ち構えていた。キューバ系のアメ
リカ人の多くが集計所の前に集結し、暴力をも辞せず
との示威運動に出て、集計立ち会い人の入場を拒んだ。
この騒ぎに嫌気のさしたデート郡の選挙管理委員会は、
26日の締め切りに間に合わない事を理由に、手作業
による集計の取り止めを発表。ゴア側は飽きもせずこ
れに対してまた上告。
なぜここにきてキューバ系アメリカ人が突如登場して
きたのだろうか。
■ 続 ・ パーンビーチ物語 (下)
キューバ系アメリカ人にしてみれば、パームビーチ郡、
ブロワード郡にはユダヤ系の民主党支持者が多いので、
勝手なふるまいもできるだろうが、マイアミ ・ デート
郡ではそうは好き勝手にはさせないぞという意地があ
るかと思う。
それに1年前、キューバから奇跡的に海を越えて亡命
してきたゴンザレス少年のキューバ引き渡しの大騒動
がある。カストロの顔色をうかがったクリントン政権
はキューバ難民アメリカ人たちが切望したゴンザレス
少年の居住権嘆願を無視して、法のもとに銃口を向け
無理やり彼等の手から少年を奪い取り、強制送還させ
てしまった怨念と屈辱がある。
このとき共和党は少年にアメリカ居住権を承認の立場
をとったことから、今回の選挙ではキューバ系アメリ
カ人の多くは共和党に回った行きさつがある。彼等に
したらまたして法の屈辱に負けてなるものかという、
民主党憎し、法憎しの感情がここで働いたのであろう。
ゴア氏はよくよく運から見放されている。今日23日
がちょうどゴンザレス少年騒動の1年目になるという。
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■ 続 ・ パーンビーチ物語 (あとがき) 2000年11月27日
集計、再集計、再々集計、再々々集計もブッシュがフロリ
ダ州で勝利。今回の騒動はパーンビーチで始まり、パーンビー
チでで終わった。ゴアはまだ敗北を認めず法廷闘争の様だが、
国民の65%は早期収結を望み、35%が法廷闘争を継続を支
持しているようである。法廷闘争は民主主義国アメリカの底流
を支える宿命でもあるが、ここいらで法を越えた智恵がほしい
ところ、さてゴアはどうするのかな。
ゴアにとり今日が「名誉ある撤退」のラストチャンスなの
だけど、理知だけで智恵のない人間は実に困ったものである。
こんなデクノボウタミネーター、運のない男がリーダーな
らなかっただけでもアメリカはまだ救われている。
早期解決を祈り、パーンビーチ物語も早期に終わりとした
い。
完了