1997年5月21日;多元在籍のすすめ…文責;山口泰幸
多元在籍(たげんざいせき)とは拙著「21世紀のビジネスシナリオ」の中で私が提言
した、ひとつの文化価値増殖のための制度で、私の造語です。
昨年当たりからいくつかの企業において、所属企業での仕事と同時に自分の好きな仕事
を手がけることができる社内制度が試験的に行われはじめています。
私が提言している多元在籍とは、創造力の増殖装置であり、厳しい見方をしても
リストラを逆手に取った、企業とサラリーマン両方にメリットのある制度なのです。
端的に言えばサラリーマンを完全な一企業従属から解放し、週3日〜4日の雇用契約
を結び、その他の時間は完全に個人の自由とするというものです。
当然、その場合、報酬はその時間に見合ったものになりますが、自由になった時間を
有効活用して、個人の能力に応じて+アルファを自分で稼ぎ出すというシステムです。
現況サラリーマンは公には所属企業の仕事以外の自分の好きなビジネスを行える
環境にはありません。勿論公然の秘密としてサイドビジネスをしているサラリーマン
を知っていますが、あくまでも日本の企業においては慣習的にサイドビジネスをサラリーマン
が行うことは御法度となっています。一旦経営者になってしまえば掛け持ちの経営が
まかり通るのにも拘わらず、サラリーマンには従属の貞節が強いられています。
こうした状況を打破しながら、しかも創造力を増殖させる方法はないものかと考えて
提案したのが多元在籍制度です。勿論やる気のないサラリーマンにはどのような
新しいシステムも猫に小判ですが、やる気のあるそして密かに経営への野心を持ち
自らの手で稼ぎ出してみたいと燃えている人材には恰好の制度です。
今の仕事、本当に5日かかりますか。やれば4日でできませんか。
残りの1日を自分自身の稼ぎのために捻出してみませんか。私はできると思います。
企業にとっても同じ目標が80%で達成できるのですから、生産性は上がります。
個人にはその代わりチャンスと言う名の報酬が与えられます。しかも最低限度の
給与を保証されつつも、そのチャンスを活かせるのです。たとえ月給が30万円から
24万円に下がったとしても、月当たり4日〜5日の時間を公然と自分の企業の
経営に使えるわけです。結論的に言えば、私は生産性、特に知的生産性はやる気
の増殖に他ならないと考えています。創造力が実質的に開花できる本格的なシステム
が必要なのです。
因みに、現在私がプロデュースを担当しているあるデザイン関連の実践プロジェクト
では、多元在籍の一つのシュミレーションとして、フルタイムで母体企業からデザイナー
を集め、各自に自由なテーマ設定とプロセスの自主管理をさせながら、創造性が
いかに発揮されうるのかを検証しています。結果的にはデザイナーなどのクリエータ
にはこうした公然の自由の発露の”場”が非常に有効であり、かつ母体企業への
有益なフィードバックも期待できることがわかりつつあります。このプロジェクトでは
フルタイムですから全ての時間を新しい創造の時間に振り当てながら、しかも母体企業
によって給与は保証されているという、非常に先鋭化したシステム検証を行っているわけですが
私の言う、文字通り多元在籍でも創造力の増殖や生産性の向上は十分に期待できます。
これからの時代は、個人がクローズアップされる時代ですが、私としては、
個人も企業も両方、贅沢なのですが、より進化すべきと思っています。
個人も楽しく豊かに、企業も総体として創造性が向上する。決して夢ではないと思います。
多元在籍;これは既存のシステムで十分に適用・検証できる概念です。
是非多くの企業が多元在籍をシミュレーションし、結果、文化価値創造企業へと
メタモルフォーゼすることを願って止みません。
多元在籍制度の詳細をお知りになりたい場合や、実行計画のご相談は電子メールにて。