”慧”小論文


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1998年-10月1日…金融大魔王へのレクイエム…文責;山口泰幸

繰り返しになりますが、ここ2〜3年で実体経済(実物経済)と金融経済の乖離が際立ってきており、あたかも 実体経済という犬の体をその何倍かにも膨れ上がった巨大な犬の尻尾が振り回しているかのようです。マハティール 首相が「(たかが)金融経済が一国の経済体制を揺るがすことは許しがたい…」と吐露したことはむしろ正鵠であり、 表層的な理論的正当性を振りかざした、ジョージソロスなどは、超巨額な金融覇権をハンドリングするに、相応しくない、 本質が見えない金融大魔王側の一門番です。
さて、2,3日前にFRB(連邦準備銀行)のグリーンスパンが低金利誘導策を発表しました。どうもその裏事情は 資金の流動性をたかめることによって、何と、かの金融大魔王の看板企業であるロングタームキャピタルヘッジファンド という民間企業を救うためだと言うのです。これは本当でしょう。こういう会社こそが金融大魔王の眷属たる 金融経済を直接ハンドリングする組織なのです。元FRBのエコノミストであるイワノビッチ氏が、「これは ヘッジファンド(という会社)が悪いのではなく、金融当局の管理が甘いのだ」と涼しい顔で言っていましたが、 それはあまりに表層的に過ぎます。
ロングタームキャピタルヘッジファンドが毎日ハンドリングする金融規模はおおよそ100兆円。これに対し 国家の金融当局が介入できるのが一度に付きおおよそ10兆円。話になりません。…で、そのロングタームキャピタルヘッジファンド がこともあろうに、資金繰りが行き詰まってきており、下手をすると倒産するというのです。だから、アメリカの 金融当局はあせりにあせって何とかこの一民間企業を助けるべく総力をあげ始めたということなのです。
考えてみれば、まだ長銀問題などはかわいいものですよね。倒産したって負債は高だか1兆円、それに対して ロングタームキャピタルヘッジファンドが倒産すれば、100兆円規模のこげ付きが発生する可能性があるわけです。 金融の連鎖倒産どころではなく、経済ハルマゲドンが起こり得るということです。
さて、ここからが本日の本題です。金融大魔王という存在はある意味で、人間の集団であり、ある意味で人知を 超えた幻想的な存在であります。高度資本主義経済の最後に出現したこの金融大魔王は、果たして最終的に 賢いのか否かということが大問題です。金融大魔王に宇宙的な意識がどこかに残っていれば、ガン細胞のように 最後まで体を食いつくしやがては自らの居場所さえも失わせしむという愚挙はどこかで抑制するはずですが、 金融大魔王が発散的なパラノイアであったならば、自らの存在なども顧みることなく資本主義経済を実体経済も金融経済も 含めて全てを破壊に導くでしょう。ここにはもはや金融大魔王の意思などはありません、ただハウリングを起こすかのように 最後の崖にまで進むことでしょう。
実は、最近の為替変動や株式取引、長銀問題などを眺めながら、ひょっとするとかの金融大魔王にも 全体の経済を破壊し尽くすことへの自制心があるのかも…との一縷の期待はありましたが、今次の ロングタームキャピタルヘッジファンドのていたらくと、その救済に走るアメリカ金融当局の状況に鑑み、 明確に金融大魔王のレベルが見えてしまいました。…結論は”それほど賢くはない”ということです。 それほど賢くはない金融大魔王がこのまま超巨大な金融経済を弄び、経済の崩壊を何ら顧みることなく 好き勝手に動き始めると、その行きつく先は…経済大崩壊しかありません。
ギャンブルにのめりこんだしょうもない親父が多額の借金を抱えて自殺するのに似ています。 でもそれだけでは済まないでしょ。しょうもない親父は女房や子供を道連れにするでしょ。取立て人は 親戚にまで押し寄せるでしょ。ロングタームキャピタルヘッジファンドという一民間企業が今倒産することは 地球全体を道連れに心中するようなものです。…だから、このヘンジファンド会社を救済するというのも なんだか空しいし…「おまえだけ勝手に死んでろ!」といっても必ずしわ寄せは来るし…さて困りましたね。
私が今一番心配しているのは、銀行や証券などよりもデリバティブというギャンブルに深入りしている 製造業です。心当たりがあるでしょ!
地球規模の経済ハルマゲドンが来たらもうこれはお手上げですが、中小規模の金融経済クラッシュならば なんとか乗り切りたいですね。それには早くギャンブル的な金融経済から手を引くことです。
丁半五分五分だから良いということではありません。丁をもしロングタームキャピタルヘッジファンドにかけて いて半が別のヘッジファンドだったらどうします。いくらギャンブル上はチャラでも、ロングタームキャピタルヘッジファンド 分の何兆円かは消滅します。それは健全な製造業を10も20も黒字倒産させて余りあるでしょう。
レクイエムとは鎮魂歌のことです。私としては、まずは早く金融大魔王という賢くも無い怪物に 静かに眠りについてもらいたいと思います。それから、早くその呪縛から特に製造業が解放されることを 望みます。人間の想念には”魔”が常に存在するわけですが、それを野放図に育て上げてはいけません。
その人間の”魔”の部分を賢明に適切に統御することが21世紀の人間自身に必要だと思うわけです。 少なくともまずは日本の製造業を守るために、「デリバティブ崩壊対策緊急法」のような法律で ”違法な海外からのとりたて”をある意味で帳消しにしてしまいながら、自己破産でもないような手立てを 考えるいいのかもしれません。
ロングタームキャピタルヘッジファンドは救済されるでしょう。ですがいずれどこかの中小規模のヘッジファンドが 倒産するでしょう。そのときの影響度をよ〜く見ておきましょう。ヘッジファンドの倒産はある意味で 地域核爆発のようなものですから。

  


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