”慧”小論文


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Conceptual- Design- Laboratory

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1998年-10月13日…150万円のスリースター!?!…文責;山口泰幸

私も以前少なからず自動車産業に関わっていましたので、やはり自動車の新商品や自動車産業の行方については 気になります。以前からこの慧でも申し上げている通り、自動車産業といういわゆる20世紀産業はその使命を 終え、次なるステージへ向かおうとしています。結論を繰り返せば、自動車という単体の動き物を製造し 売っていくという商売は斜陽であるということです。物理的な市場として、中国やアジア、アフリカなどが 挙げられもしますが、地球環境問題や化石燃料の枯渇、今後の化石燃料系インフラ整備のビジネス的な 難しさから、既存の路線の延長線上ではこれらの市場への純増加は見込めません。
…が、トータルモビリティサービスという視点では話は全く違ってきます。移動する空間を提供してきた という意味では既存の自動車という単体の商品もそれなりの役割を果たしてきました。しかし、本質としての 移動する空間という概念から遠ざかりいわゆるひとつの個物としての自動車に執着していては、21世紀のモビリティ サービスビジネスは覚つきません。
またまた、結論を急げば私は、21世紀のモビリティビジネスの市場規模はあらゆる面を想定して、現状の 約三倍規模にはなるだろうと考えています。この辺の詳細はまた別の機会に譲ります。
…で、その増殖する、あるいはすべき、未来のモビリティビジネスエリアですが、このエリアを支える主役は一体誰か ということになりますと、それは必ずしも「既存の自動車産業・企業」ではないかもしれないとことなのです。 その辺にビジネスの面白さとダイナミズムがあるのではないでしょうか。
約60億人の地球上の人類が、移動する空間のサービスをこれからも享受することは間違い無い事実でしょう。
しかし、移動する空間を創造し、演出し、そしてそのための技術の行くへは一体どのようになるのかという ことはあまり論議されていませんね。既存の自動車産業は当然自分たちがやる、あるいはやれるだろうと 自負しているでしょうし、自動車産業以外の企業には「自動車は自動車会社が作るもの」というような 潜在的な神話のようなものがあることも本当です。
自動車産業は20世紀の超優等生ですが、その基盤はこれまた20世紀の最大の特徴である超高度化された 大量画一生産システムであり、それを支える高度化された現代資本主義です。
さて、昨今起こっている信じられないような倒産劇や銀行の破綻などから説明が不要なくらい、20世紀的な 経済システムは瓦解・新生に向けて走り始めています。また、20世紀的な大量画一生産システムも それへの絶大な信奉とは裏腹に、いともたやすく転換し始めています。
こうした状況下、21世紀のモビリティサービスビジネスを本当に現況の自動車産業のみがあらたな基幹産業 として支え得るのかというと、そんな保証はどこにもありません。既存の成功体験や既存の高度なシステム・ 制度にしがみつく企業ほど、その努力も空しく21世紀のモビリティビジネスからおいてきぼりにされること でしょう。
さて、さて今回もだいぶ”前説(マエセツ)”が長引きましたが、本題は”スリースター”への疑問です。 スリースターとはかのベンツのブランドマークです。
自動車愛好家の中ではやはりベンツ神話は強烈なもので、20年前はよくあのスリースターのマークだけを 自分のクルマに張りつけていた人もいました。そして今でもメルセデスベンツは世界に冠たる最高級車なのです。 ベンツの600クラスはゆうに1000万円から2000万円ですが、そのブランド力と自動車としての機能・性能面から ベンツのクルマは良く売れ、ビジネス的にも成功を収めています。また、最近ではクライスラーとの 合併劇を演出して見せて、その世界戦略性も世界にアッピールしました。
…ところが、そのベンツの最新の商品がこの秋に世に問われたのですが、少なくとも私はそのクルマと同時に ベンツという企業の将来性が少し不安というか不可解になり始めました。
かれらが作り出した最新作はベンツAクラスという小型車です。これは何から何までまるっきり一から作った クルマです。そしてそのフロントマスクにはかのスリースターが燦然と輝いているのです。
…で、一番驚いたのはその値段です。日本市場で約265万円。昨今日本の軽自動車が安全面での規制強化に合わせて 一斉に新車投入をしてきました。その絡みもあり、1000ccクラスの超小型車群もなかなか面白い商品が揃い始めています。 おおよそそれらの価格は100万円〜150万円。軽自動車の中には100万円を切るものも多くあります。
Aクラスのエンジンは少し大きめですが、ごく一般的に言えばAクラスも日本の超小型車も軽自動車も 「同じようなものなのです!!!」。ましてや性能とデザインが極めて向上した軽自動車を超小型車群に 入れて考えれば、本当に「彼らは同じ仲間なのです」。…が、今この時期に同種のクルマをグローバルマーケット で競争させるときに、何とベンツは平気で”265万円”という日本車の約2倍強の値段で勝負しようというのです。 確かにベンツならではの安全性追求やその他の商品力向上策を打っているとは思いますが… (私は直接まだモーターショウでしか触れてはいませんが、改めて触れて見て考えが変わりそうもありません)これはどうしても スリースターというたかが部品・されどブランドにたいまい150万円の値づけをしているとしか思えません。 まさか、フランスやイタリヤの高級ファッションブランドのように、そのブランドにつけた値段だ… などとベンツが真顔で言うわけはないとは思いますが…。
結論から言えば、ブランド力とブランド代で何とか顧客満足を吸収していたベンツの高級車群はよかったが、ココに来て ベンツ=ドイツというヨーロッパの覇者はもはや、”100万円前後のモビリティは生み出せない!!!”という ことがはっきりと見えてしまったということでしょう。
21世紀は大量画一生産システムを昇華した新しい生産システムが伸張すると思いますが、それでもやはり 「安く生み出す技術」はトータルモビリティサービスのビジネスにおいては必須でありましょう。 私はこれからのモビリティサービス市場は既存の約三倍は増殖すると前述しましたが、その多くは 「化石燃料を超えた環境対応クルマ」「超小型で廉価なクルマ」に依拠すると思います。その意味で それを生み出し得る生産技術がもはや日本にしか残っていないような気もします。
なんだか面白くもなってきましたね。…しかし古い発想としがらみに固執している日本の自動車会社は 多分生き残れないでしょうから、そこの辺はよ〜く未来戦略立案と組織改革を推進していただきたいと思います。 蛇足ですが、ベンツAクラスはアイポイント=運転者の目の位置と、ウインドウ下端点と、フロントエンドが ほぼ一直線上にあり、「フロント周りの外形を心理空間的に把握しにくいデイメンションになっている」ので 超小型車の割にはその空間を扱いにくいと思われます。デザイン的には、フロント周りとリアウインドウ周り の一環性がなくて、それぞれ個々に見ると別のクルマに見えます。ご購入される方へのアドバイスです。
というわけで、なんだか自動車商品論評みたいになってしまいましたが、21世紀におけるモビリティサービス の産出技術のあり方と日本企業の戦略という大命題を含んで提議させていただきました。

  


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