”慧”小論文


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1999年-7月21日…純粋内変の哲学…文責;山口泰幸

私事ではありますが、危篤の父を卆寿で見取ったあわただしい7月でありました。小生にとりましての1999年7の月の寓意とは実にこのことだったのか… などと久々に人間と死生観を振り返る好機とはなりました。通夜の席に靖国神社の帰途、立ち寄っていただいた父と海兵58期同期の二人の老紳士との 邂逅が、比較的”手のかかる親父”であった父の最後で最大のプレゼントになりました。卆寿を迎えるこのお二人の紳士の誠に矍鑠とした立ち居振舞いに 明治の日本人の優雅さと毅然たる姿勢とを垣間見させていただきました。耳が少し遠くなったことを除けば、話す内容と頭の回転はいまだ40代。 ご両者の心配の種はといえば、日本の行く末そして現状の政治家のふがいなさ。ご自身の健康の不安さなど微塵も口に出さず、真に日本の将来を ご心配の様子なのであります。やはり明治という時代は凄い時代であったのだとつくづく実感した次第です。
さて、さて本日のお題はややとっつきにくい哲学的な命題です。というのも、昨今の日本を取り巻く世界情勢の流れを鑑みるに、江戸時代から明治維新にかけて 先人たちが時代の乱流の中に敢えて、「脱亜入欧」の理念を掲げ、時代にむやみに抗することなく、時代に身をゆだねながらも日本の独自のアイデンティティを 築き上げようとした…その流れと思いと同じようなものを「今の時代の奔流」に感じざるを得ないからです。
覇道に覇道をもって抗する時代はいうまでも無く終わっており、いまや大魔道にほぼ蹂躙されてしまった…というのが正確なところではないかと思うわけです。 大魔道とは言うまでも無く、国際金融資本に表徴される人間の悪の部分の集合体で、現実には超金融資本、それにともなう新しい国際システム、グローバルな 産業大再編、超ハイテク戦争等々によって表出されるすべてです。…大魔道の個々の事象に付いてはまた別の機会で論及したいと思います。
今回のテーマは「純粋内変」ですが、敢えてこの時期に哲学的命題を口にするのは、有る意味で、もはや大魔道浸透の奔流に対しては、覇道でも魔道でもなく、 「光道」しか残されていない…事態はそこまで極まっていると観相しているからです。表層的に言えば、軍事、政治、経済その他の諸相においてもはやアメリカ という超大国に敵対できる存在はありません。あらゆる新しい世界システムが是非論はともかくアメリカの思惑とご都合によって、創出され洗練されていくことでしょう。
過日「背景としての米中決戦」を記しましたが、21世紀初頭に向けて既に米中最終決戦の火蓋は切られたと見るべきでしょう。その証拠が一見矛盾的に見えますが 中国のWTO加盟と中国への民主化圧力強化の飴と鞭作戦といえます。特に民主化に関しては、中国内の巨大新興宗教集団である法輪功の積極的な動きに その背景の力を感じ取ることができます。また、間接的には台湾総統の「国対国の関係論」なども大きな流れとしては大中国変容の先鞭となるはずです。
ただし、ある意味で最も明治時代の日本の精神をよい意味で引き継がれいる李登輝総統の中国の将来デザインについては魔道的な流れではない、むしろ 本日のテーマである純粋内変の予兆としてまたあらためて言及したいと思います。

純粋内変とはある確立された自律の閉鎖系がなんらの外部要因によらず、純粋にその内部の要因のみによって、今までとはまったく違うものに生まれ変わってしまう 概念を言います。たとえば、蝶の幼虫がさなぎになりやがてその固い殻をやぶってまたっく新しい形態の蝶へとメタモルフォーゼしますが、そのように 純粋にその内部に存在する構造や意識によって、それそのものが大幅に変容していくことなのです。
そう言う意味では、唯一「宇宙の真理」あるいは「存在の根源」という外部にも内部にもあまねく存在する潜在力によって、自己自身が進化してしまうという ことなのです。人間社会の中における純粋内変とは社会を構成する人間一人一人にその存在を与えている宇宙的な真理が少なからずすべてに宿っている わけで、その内在された根源的変化力が「光」であり、その内的な光に唯一リードされながら進化を続けるのが「光道」という意味合いです。
20世紀的な感性から言えば、これは悲観的なことであって、もはやここまで魔道が浸透すれば、覇道や魔道をもってしても、その大きな流れに飲み込まれてしまう ということなのです。そしてそれに抗することができるものそれは人間が人間として生を享受できる根拠となっている根源的な内在力のみであり、逆にそれこそが 21世紀には最高で最大のパワーになるということです。

従って、今私たちが追究すべきは、明治維新のころの「脱亜入欧」の理念よろしく、「脱魔入光」とでもいうべき、人間の純粋内変を哲学として構築し、その展開を 具体的な実践として着実に積み重ねることなのではないでしょうか。

覇道や魔道という直接的な物理力の信奉を超えたところに「光道」はあるので、いわゆる20世紀的な軍事や経済のありかたも大幅に変わってくるはずです。
物理的存在がある以上軍事もその裏側として必然となりますが、力の根底が変化すればその展開である軍事の様相も変わりうるということであります。

「光道」という純粋内変は人間が企図してできるものでは有りません。逆にそれゆえに「光道」であり意義のあることなのですが…つまり現況のような魔道が 大躍進しつくしても、やがて純粋内変が起こり結果として「光道」が構築されてしまうということです。
そう言う意味で、ある意味で悲観的でありながら、ある意味で楽観的に現況の流れに身をゆだねることもできるわけです。

先日NHKの番組で超ハイテク戦争について取り上げていましたが、二人の元軍トップのコメントが対照的でした。一人はこの数年間で確立された 情報戦争で戦争は大いに変わり、自国の損失最小化と敵国への最大効率のダメージとを鼻高げに言っていました。もうひとりは、画面上で 殺されゆく敵国兵士にも家族があることをおもい、そのゲーム感覚的な進化した現代戦争が何か非常に後味の悪いものに映ったと言っていました。
すなわち、前者が魔道の極みであり、後者が純粋内変なのです。
現時点では、一見頭のよさそうな前者のような人間がもてはやされ、本人も超一流の21世紀的な専門家であると自負しているのでしょうが、実態は 前者は既に時代遅れであり、実は後者の純粋内変型人間(彼も湾岸戦争経験者)が21世紀的な人間の走りなのです。

「極まれば対極生ず、おぼろ月」…純粋内変はおそらく21世紀初頭に多く見られる現象や状況であり、これによりあらゆるものが21世紀的に アウフヘーベンしながら進化していくことでしょう。純粋内変の哲学は今後の拙論の前提に大きく横たわる、否、横たえることになります。

大魔道というクローズド系がどう頑張ろうとも、その結果として生み出すものは、純粋内変の産物であり、大いに大魔道の企図に反するものになりそうです。

幸い日本は本質的には半分くらい21世紀的な純粋内変を起こしつつあるのではないかと考えています。焦びの急はやはり、米中決戦の片方の雄、中国 ですね。これがどう純粋内変を起こし21世紀的に変容していくか…じっくりと見守りたいと思います。ただし、どうもトリガーとしての魔道側の 「火付け」はありそう雲行きです。テポドンよりも台湾海峡がさきか…というところでしょうか!!!

  


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