”慧”小論文


アナタの頭脳をサポートする…
(R)

Conceptual- Design- Laboratory

概念デザイン研究所の立体登録商標;「創造の生命場」
『概念デザイン研究所』は登録商標です。

by Yamaguchi Taikoh執筆者宛メール
(C)Copyright 1995-2001 all right reserved by Taikoh Yamaguchi
No download, No utilize please without asking!
 

1999年-10月22日…21世紀型企業の考察3;日産再生プラン:NRPに思う…文責;山口泰幸

シリーズ2で述べましたように、今次の日産再生プランは20世紀を代表する製造業である自動車産業・企業の21世紀型への適応の
試金石、あるいは雛形として非常に重要であり、蓄積された諸問題、今後の典型的な諸課題、そして打開策の切り口が請われる
シンボリックな対象です。その証左が、10月20日から実質的に始まった東京モーターショーにおける主役が、なみいる
他のコンセプトカー群を置き去りにして、かの日産COOカルロス・ゴーン氏であったことです。それでは本日は試金石としての
日産再生プラン(以下NRP、ココに公式ページがあります)について考えてみたい
と思います。前回よりもさらに客観的に、辛口で見てみましょう。

その前に、10月22日に新聞紙上で元日産自動車社長・会長、現日本自動車工業会会長の辻氏が象徴的な見解を披露されましたので
これについてまずもって言及しておきます。現在ゴーン氏の(日本人、日本人社会から見れば驚きの)痛みを伴う劇的な日産リストラ策の中で、
グループ全体で21000人に及ぶリストラに耳目は集中しています。ゴーン氏は真意をやや控えながら全員解雇ではなく緩やかなリストラである
ことを表明していますが、その後地方自治体、首相、関係閣僚、マスコミ等々からの、(ゴーン氏の)予想に反した懸念の表出に
実際のところゴーンCOOも塙日産会長、シュバイツアールノー会長も緊張を強いられるここ数日なのではないでしょうか。
その具体的反応は「このような大リストラを生んだ過去の経営に対する責任の提起」がマスコミを軸として各界から出始めています。
トヨタ会長でもある奥田日経連会長は、首相や閣僚の要請も踏まえ、経済団体レベルでの雇用確保について早急なる配慮を
していますが、奥田会長の真意には、「トヨタではすでに新しい雇用創出を込みで戦略転換していること」「日本社会の中で安易に解雇を
発生させるべきことではないこと」、そして「リストラを生み出す経営施策へのに対する暗示的批判」が現れています。
そうした状況下、辻元日産会長の言は「一生懸命にやってきているのだから過去の経営陣には責任はない」「それほど多くの取引先が
あろうとは知らなかった」「他社保有株がそれほど多いとは知らなかった」…と官僚の国会答弁を思い起こさせるものでした。
マスコミは「今までの経営陣の報酬を返還せよ!」などと扇情的に揶揄していますが、それは言い過ぎにしても、20世紀的製造業の有る意味で
平均的で官僚的な経営の実態なのかとしみじみ思い知らされました。経営とは、一所懸命やって当たり前、戦略的な頭を使って当たり前、
全てを掌握していて当たり前、それでもうまくいくか行かぬかは未知なる領域という認識が常識、結果失敗すれば無言のうちに責任をとる、
そういうものではないのでしょうか…

さて本論に入りましょう。私としては今次のNRPには大きく以下の7つの課題(着実に乗り越えるべきこと)があると思います。
(因みに、NRPが日産の公式のページで公開されていることは極めて21世紀的であり前向きです。これほど重要な機密事項である経営戦略を
公開していく…そこに企業経営と市場とがウエッブによって綿密に連携されていくという21世紀型企業の図式があります。)

@日本式雇用確保の慣習と、西欧型”解雇式”経費調整の慣習との、実は奥深い「文化の衝突」をどのように乗り越えるか。…
ゴーン氏は、あまりにも過敏な日本社会の大規模リストラへの反応に、内心は驚いているはずです。また一企業の雇用創出問題に
社会がこぞって反応を示していることにあらためて「日本」を感じていることでしょう。ゴーン氏のリストラは欧州ベルギーでの解雇・
工場閉鎖に比べれば非常に緩やかなものであり、自然減、新入社員の絞込み、他社への転籍、退職勧奨金の上積み等を考えれば
欧州の労働者からはまさに天国のような状況でしょう。…がそれでも日本の感性は突然の首切りというキーワードを忌避します。
今次のNRPリストラ策にはいやが応でも奥田日経連会長が示唆するような、「新たな雇用創出の工夫」を併行実施しなければなりません。
この文化衝突、その解決策としての雇用創出をさらなる努力と智恵で案出していくこと…それが最大の課題になりましょう。

A上記に付帯しますが、それでは新しい受け皿としての新ビジネスを生み出すアイディアをいかに具体的に効果的にしていくか…
これが2番目の課題です。奥田日経連会長の言うことは尤もです。しかしその具体策となると、システム的にも人材的にも本当に
枯れて果ててしまっているのが日本の現状です。ココ数十年間日本における、個性を生かした創造性開発を怠ってきたつけが
大きく響いているのです。具体策をどうするか、方法論は、学問的な裏づけは…等々、日本社会へ投げかけられた課題として
実に「新ビジネス創出」の課題は重いといわざるを得ません。いうまでもなく日産はその個別解をも捻出しなければならないわけです。

Bゴーン氏の標榜する日産再生の当面の重要な戦略の中に、自動車本来への回帰があります。すなわち自動車という商品に絞って
本業に立ち返って出直しをするというものです。前回述べた様にNRPは出血対策ですから経営施策としては見事に的を得たもので
経営の常道と言えましょう。その結果、黒字である、フォークリフト、宇宙航空等を本業ではないとの理由で売却しつつあります。
ところで、たしかに本業回帰は経営の常道では有りますし、フォークリフトや宇宙航空を手離すことにはそれほど異論はありませんが
自動車単体への志向が、本当に自動車という個物へと回帰していくとなると、あるいはそういう誤謬が社内に蔓延すると事態は
悪化する方向にあります。それは前述の様に、21世紀型企業の本質は地球全体との協働、すなわち総合的な生命化であって、
それゆえに生産するものがハード、ソフト、政策、文化等々と切っても切れない関係にはまっていくということです。従って
たとえハード自身は個物に絞ったとしても、情報やサービス、その他のエンターテインメント、環境対策、地域配慮、文化形成等々の
観点で、21世紀型企業の産出するものは、あらゆる分野に広がり、あらゆる対象と関係を不可分にしていくということになります。
トヨタが生み出した世界標準である「カンバン方式」は、近年、高速道路の渋滞を引き起こし、トヨタは道路上のトラックの中に
部品を在庫していると揶揄されました。おそらく20世紀型個別企業対応かつ地域環境無配慮型の「カンバン方式」は21世紀には
変容されるはずです。…既にトヨタはその対策をやり始めているのではないでしょうか…
要するに、本業回帰は大いに結構。ただし生み出される商品は実は個物のみではない…これが21世紀型企業の生存基盤です。
この切り口を如何にクリアしていくのかが今回のNRPでは全く未知数ゆえに、今後の大きな課題になりえましょう。

C是非論はともかく巷が言うように、日産には官僚体質が色濃くあると言われています。そういう現実があるということを踏まえなければなりません。
これなどはまさしく他の企業へ展開できる試金石です。日本の企業にはやはり官僚体質が多く残存していると思われます。
官僚体質が時代の激変時に最も悪く作用するのは、「責任逃れ」「長いものには巻かれろ」「先例への固執」といった悪弊が
そのまま体現してくることです。日産に限らず官僚体質を既存の文化にしてきている企業はこれらの悪弊をどう凌駕し、
卒業していくのかという副次的な(有る意味ではばかばかしい)努力が必要となります。NRPには表面に出てきているゴーン流
大計画と同時に過去に積み上げてきた官僚体質の悪弊大掃除に同等以上の努力が必要となりましょう。

Dリストラとは日本語訳では「人減らし」だそうです。やはり実態がそうだからでしょう。…で、いなくなるのは技術力、人脈、人望
を兼ね備えた比較的老練な人たちであることも真実です。要するに良い人材、使える人材が実際の技術力と共に消失していくのがリストラの
裏側の姿です。そういう意味では日産における21000人のリストラは現実的な技術力の低下を引き起こします。
この技術力低下をどう食い止めるのか、技術という切り口をそもそもどのように考えるのか、その柱を何にするのか…そうした整理が 必要です。

E1990年代前半から中にかけて巨大に膨らんだ有利子負債、なんとしても大きすぎるこの負債をNRP後どのように解決していくのか。
それが一向に見えてきません。ルノーから資本を注入し、開発銀行から借入し、…それでもまだまだ残る数千億円の負債。
山一證券はたった2600億円の負債で、廃業に追い込まれました!

F昭和20年代から数度繰り返された社内を二分し、困窮させたといわれる社内紛争、それを戦略的な梃子と同時に隠れ蓑やエクスキューズに
利用してきた系譜、その流れに絡む連綿とした命脈というものが独特の企業キャラクターとして日産には有るといわれています。
このような命脈という企業の深層流的文化は以外に途切れることはありません。黒船ゴーン氏はこの日産独自の企業文化とも
明快に対峙していくことになりましょう。それを断ち切るのか、それとも内包し止揚させていってしまうのか。
はたまた急激な若返りによって完全に意識転換できるのか…やはり大事にしたいのは若い人たちの自覚と意識ですね。
…不自然なことはやらない!…それがひとつの道しるべのような気がします。

以上が現時点で私が認識している21世紀型試金石であるNRPの7大課題です。
いうまでもなく、2000年度までに黒字化するというゴーン氏の必達目標が不成功に終わりNRPが頓挫するならば、
名門日産は名実ともに”落日”します。結果、ルノーが日産の美味しい資産のみを厳選して引き継ぐということになるでしょう。
そしてそのルノーはさらなる大規模アライアンスの一翼に、それを土産として参画することになりましょう。美味しい資産とは、
「販路」「ブランド」
「技術(特に環境)」「人材の一部」であります。…ただしご心配なく、これはあくまでもネガティブ
な結末を冷厳に述べただけですから。そうならないように、上記課題を具体的に述べたわけです。

逆にシナリオどおりNRPがゴーン体制の元成功すれば、一人日産のみならず追随すべき企業群、あるいは先行する全ての
先進企業群にも非常に有益な解決の先例が得られるのです。もし成功した暁には是非とも全世界に向けて具体的にその成功のプロセスと
要因をつまびらかにして欲しいものです。

具体的には、日本として次の21世紀へのKeyがえられます。

@緩やかなリストラ→新雇用創出のノウハウ→世界へ展開可能
A系列の解体→ピラミッド型から新しい世界規模のアライアンス形成
Bコンセプト・デザイン主導の(迅速)商品開発システム構築と具体的商品
C”責任”の再定義と実践
D官僚体質からの抜け出し方

日本の企業群が独自の個性を輝かせながらも、グローバルに21世紀型企業として生存していくために、上記の5つのKeyは
経営の共通施策として大いに役立つことができるでしょう。

  


keiheadtop