随筆集;「超古代巨石文化」


随筆集004;10/Jun 2000

石が樹を育てる Copyright(C) 2000 by Taizan


長年山を歩き、巨石に触れて来ていれば誰しもが感じることであると思うが、「巨石からはエネルギーが放射されている」というのは極自然な感覚なのである。 巨石の上にまるで蛸の足を伸ばすように居座る大樹、石割云々とか称されて岩の間から大木が茂っている例など、巨石と大木はあたかも”セット商品”のようだ。 私の庭に並べてある大理石の踏み石の周囲10cm程の芝生がいつも妙に青々として成長が早いことも常々面白いとは感じていた。

私にとっては「巨石が周囲の植物の成長促進に寄与している」という事実は、あまりに日常過ぎてことさら言及する話でもなかったのだが、最近ある写真を見て これはやはり巨石文化ファンの皆様には是非ともお伝えしておきたいと思ったのである。

その写真と言うのは雑誌や新聞で最近よく広告が出ている、アメリカのaventis.com(ライフサイエンス全般の企業)がイメージとして掲載している大木の写真である。 写真の意図はおそらくこの大木の生命と人間の生命(下の写真はトリミング後で元絵には女の子がブランコに載っている)の連鎖を訴求しているものと思われるが、 私の目に印象深く入ってきた光景は、「(日本のピラミッドシリーズで度々登場する”畳石”のような)大木の隣に鎮座する平べったい巨石」の姿であった。 まずはその写真を見ていただきたい。…「ああ、この大木はこの巨石に育てられている…」と、思わず呟いていた。そして外国の風景(おそらくカナダあたり?)の中に 日本で良く見かけるこうした大木と巨石の共存の光景があることに感動し、「書いておきたい」と思った次第である。


出典;aventis.com広告(日経ビジネス誌上)


「石が樹を育てる」というテーマで是非紹介しておきたい写真をご紹介しよう。この二つの写真は山梨県甲府市の市街地に在る神社の御神木である杉を撮影したもので、 同じ杉の大木の根元を別角度から撮影している。この大木は既に数百年は年齢を重ねていると考えられるが、左側の写真で分かるように、石(比較的小ぶりだが)を 覆い隠すように、しかも石を倒すことなく大木が屹立しているのである。私はこの光景を見たときには流石に驚いたのである。それは、それ以前には、巨石が大木を 育てるという漠然とした感覚は持っていたが、このように、「大木が石に”敬意を払いながら”邪魔をしないように成長する」ということを初めて知ったからである。

この写真の石は加工された岩がストーンサークル状になったものであることは明らかである。おそらく数百年前からこの列石は存在していたのだろう。そしてその中に杉の種子が 落ち、あるいは植えられ成長してやがて現在のような大木になったものと考えられる。ポイントはその成長のプロセスである。写真の大木の自重からすれば周囲の 列石の各々の石の重さはたかが知れているだろう。大木の重量と成長の圧力で十分に列石を「押しのける」パワーはあると言える。しかし現実は写真のように 確かに、御神木の杉は列石を「抱くように」成長している。まるでその様子は、柔らかい樹液が列石の上から蜜のように包み込んでいくようだ。

そういう意味から、巨石(石)は樹を育てると同時に、樹は巨石を敬いながら、謙虚に成長する…と結論付けられよう。このことは非常に重要な概念である。 すなわち、樹(植物)は巨石からエネルギーはもらっても、巨石(親元)を崩壊させるような成長は基本的にしないということだ。

つまり森の中で木々に覆われながら眠っている巨石群は、「破壊されずに温存されている」可能性が極めて高いということになる。巨石の崩壊は人間、雨、風の 順で起こされているのかもしれない。


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これは「盛岡シリーズ」で紹介した有名な「石割桜」である。…が、以上のような観点から言えば、名前に反して、桜がこの巨石を割ったのではなく、 割れた巨石(巨石が”割れる”というテーマについてはまた別項にて論及したい)の中から桜が育って、それは巨石を押しのけてはいない、と言えよう。 ただ、この桜は「石割桜」と言われて、桜自身が有名になることにより、この巨石自体を”隠している”とも見え、桜の巨石に対する謙虚さが滲み出ている。 もし、この巨石だけがあれば、盛岡市内の裁判所の庭という非常に目立つ場所において、巨石自身の身の置き場がなさそうなことは事実である。


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巨石が発するエネルギーが巨木を成長させる。しかし巨木は巨石に首座を譲っている(謙虚に育つ)。木々は巨石を壊すのではなく、反対に包み込むことで 巨石を守る方向に働いている。…そういうような感覚を持ちながら森や巨石(言うまでも無くピラミッド山も)に触れて頂くと、巨石文化の世界観(物言わぬ 生態系)がぐっと広がることと思うのである。


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